2023年12月4日月曜日

声にならない声に耳を傾ける

先月末、脚本家の山田太一さんが亡くなられました。
今の若い世代はあまり知らないかもしれませんが、数々のヒットドラマを手掛けられた著名な脚本家でした。
特に大学生の青春を描いた「ふぞろいの林檎たち」は大ヒットし、1983年にスタートしてから、1997年前までシリーズとして継続するほどの人気でした。
山田さんが亡くなってからテレビで山田さんの作品が紹介されていて、目が釘付けになってしまったのが、1976年から1982年までシリーズとして放送されたドラマ「男たちの旅路」の第4部の中で放送された「車輪の一歩」というドラマでした。
当時は、車いすを使っていると、バス、タクシーにも乗車拒否され、さらに飛行機でも搭乗拒否されるような社会でした。
駅も全部階段で、車いすではどこにも出かけることができず、結果、自宅に引きこもるしかなかった。
この当時の社会は、障がい者に対して非常に不親切でした。
この頃は、私が学生の時期になります。
記憶を辿ると、当時は、バリアフリーといった考え方は皆無で、障がい者に不親切というようりも、不親切であることにさえ気付けていない社会であったように思います。
今回知った「車輪の一歩」はこの問題を取り上げたドラマでした。
ドラマの中で「人に迷惑をかけることを怖れるな」という、その後、有名になるセリフがあったようで、これは山田さんが感じていたことを役者さんを通し社会に向けて発せられたメッセージだったでしょう。
ドラマのラストシーンが、Youtubeにありました。
障がいで引きこもりがちだった少女が勇気を振り絞って「声を出した」様子が描かれています。

このドラマによって障がい者がおかれている状況が社会に認知され、ドラマがバリアフリーという概念を浸透させていくのに大きな役割を果たしたのではないかと思います。

このドラマの存在を知ってから思い出したのが、是枝監督の次のツイート。
もう8年も前のツイートです。テレビの役割、映像の役割について書かれていました。


「声にならない声を音にする」を読んで、その時はうまく咀嚼できず、モヤモヤしてました。
モヤモヤをいつか解消しようと、ツイートのスクショを見えるところにおいて、意味を考えてました。
それが、山田太一さんの「車輪の一歩」を知って、霧が晴れた感じでした。
是枝監督の言葉がようやく腑に落ちました。

それと同時に、私自身について反省。
研究などに向き合うとき、こうした態度を少しでも持っていただろうか、と。
研究以外だと、どうだったろうか、と。
ひたすら、すでに注目されていることをただ拡声器としてやってきただけではなかったろうか、と。
声にする必要がない目立つ声にだけ向き合い、それだけをただ追っていく態度に終始していたのではないかと強く反省しました。

あと少しで退職。
退職後、まだ少し何かやれるとしたならば、是枝監督の言葉や山田太一さんの実践を頭のどこかに置き、声にならない声に意識を集中させながら、ひとり静かに活動していければと思いました。
これからのことはまだ何も考えていませんけど、「声にならない声に耳を傾ける」という態度はできるだけ持って、過ごしていこうと思います。