経団連の就活ルール廃止のニュースは、これまで長きにわたって日本の社会形成に寄与してきたルールが正式に崩壊するという意味で、衝撃でした。
日本社会が内外からの変化圧を受けていることを実感させられます。
来年度までは現行ルールを維持するということですが、企業の採用活動の実態はすでにもうかなり変わってきているように感じます。
就活活動を行っている4年生を毎日見ていると、以前とは随分と動き方が違うようです。
さて、就活ルールが廃止されると、採用活動の早期化に歯止めがかからないのではなかろうか、そうするとどういったことになるのかと、そんなことをちょうど一カ月前のガリラボ通信にも書いたところでした(ガリラボ通信2019/3/26)。
就活ルールの廃止という大きな変革に続き、ここ数日の日経新聞に、企業の採用活動についての新たな記事が掲載されていました。
今後は「新卒一括採用を見直し、通年採用に移行する」のだというのです。
(先の就活ルール廃止とセットで当初から考えられていたのかもしれません)
記事によれば、この移行は大学側とも合意したとあります。
ただし、新卒確保のため、一括採用が完全になくなることはないようです。
しかしながら、通年採用となると入社は随時となるわけで、これまで当たり前にあった新卒の4月1日入社式という日本の風物詩が縮小されることになります。
雇用において日本全体に大きな影響を与えていきそうです。
通年採用は外国人労働者確保などの意味もあるようです。
ただ、企業側にとっては、それ以上に勉強する学生がほしいという点に重心がおかれているようです。
次は上記記事に続いて掲載された4月19日の日経新聞の記事冒頭部分です。
企業側は”誰でもよい”わけでなく、その学生が”ほんとに優秀”なのかどうかを見極める必要があります。
それは企業の存続のかわかる重要な判断でもあります。
まだ学生としてよくわからない低学年での採用の早期化は、そうした能力を見極められるかどうかについて、かなりリスクを高めるという危険性があります。
本当は企業もそんな危険なことはやりたくないわけです。
その点に関し、記事の中に次のような記載がありました。
3年生までの成績で学生を評価する今の就活では、学生時代に身につける能力について中途半端な評価しかできない。経団連の中西宏明会長はこれまで「きちんと勉強した学生を企業が採用するのがゴールだ」と訴えてきた。報告書でも「高い専門性を求めるなら、卒業論文や研究の成果も重視すべきだ」とする。
私もこの報告書の立場に賛成です。
優れた学生は卒論に向かう能力がかなり違います。
卒論に向き合うようになって初めて、明確でないテーマに向き合っても前に進める能力とか、くじけない力とかが試され、本腰を入れてやらないといけない仕事に向いているかどうかがわかります。
卒論に向き合う態度、そして書かれた卒論の水準を比較すれば、仕事をしていく上での能力の程度は、早期に見分けるよりもかなり高い確率で優秀が学生を見出せるはずです。
もっとも文系の場合に、専門性を卒論だけに求められるのかという問題はあります。
しかしそれでも、卒論という長期の課題に向き合う態度は、仕事に向き合う真摯さと関連するものと思います。卒論とそれを作り上げるまでのポートフォリオ(研究ノート)とを同時に提出してもらえば、それらはその人の能力を測る大事な指標となるだろうと思います。
優秀な人材確保に向けて、通年採用にして、卒業した後の学生でも、優秀な学生は”高い処遇”で迎えることもありえるとのこと。
経団連は大学側との合意で、大学を卒業した学生が就職活動をできる仕組みなども整えるとする。通年採用の狙いは単なる就活の前倒しではなく、大学4年間で学ぶ学生を評価し、高い処遇で迎えることにもある。 「自ら問題を見つけ、解決する力を伸ばす体系に教育を改める」。中西氏は3月のインタビューでこう語った。横並びの一括採用が時代遅れになった今、大学も従来型の人材育成ではおかしい。
日本全体を支配していた「横並びパラダイム」が今後破壊されることになると、日本の雇用のあり方が変化することは当然ですが、そのことは同時に教育現場に大きな影響を与えることになっていくはずです(だから企業側と大学側とで協議してきたんでしょうから)。
通年採用がいつぐらいから始まるかはわかりませんが、就活ルール廃止と同時に始める可能性もあります(前に、テレビのニュースで大手のある人事担当者がすぐにでも始めたいということを言ってたことを思い出しました)。
そうするともうしばらくすると社内には多少な人たちが随時入社してくるようになります。また、通年採用は転職も促進していくのではないかと思います。
その年に入社した社員は、ほぼ22歳という横一線の年齢ばかりでなく、色々な人たちが混在する多様性に満ちた姿に変わっていくことでしょう。
次はネットに出ていた(こちら)、現代の入社式の様子(左)と、私が大学を卒業した頃の随分前の入社式を比較したものです。
横並びパラダイムが現代は強烈に浸透してしていることを端的に表現しているようです。
昔の方が、外見的ではありますが、多様性があったように感じます。
今は、平成から次の時代へと転換させようとしている時期ですし、そしてグローバル化が定着してきた時代にもなったわけですから、ここはやっぱり多様性を求めて変化した方が良さそうです。
社会の環境変化を受けて大学教育はかなり変わらざるを得ないでしょう。
平成の初期、平成3年に大学に起きた大事件「大学大綱化」で、30年ほどかけて変質してきた大学を、新しい形に体質改善をしていくことを令和の初めからやっていかねばならないことになります。
学生も教職員もしんどくなりそうです。
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