2024年1月28日日曜日

講義もそろそろ最終回へ

大学でメインで行っていた講義も次回で最終回。毎回、授業後に満足度等を聞いていますが、例年、特別講義に来ていただく熊日新聞の方の評価が一番高いという結果となります。
それが、前回(第14回講義)、逆転はできなかったものの、僅差に迫る満足度となっていました。比較すべきものでもないのかもしれませんが、つい変なプライドが・・・(笑)。

(とりあえずそれなりに頑張った)第14回講義は失敗をテーマにしたもので、受講生の課題提出後に公開している補足・コメントの冒頭部分は次の内容でした(課題を締め切った後、夜中に推敲なしで書いているものです):

失敗をテーマに、そしてパート3「情報社会のリスクと安全」全体の補足説明の意味も込めて講義を行いました。満足度はこれまでの中でかなり高く、受講生皆さん、興味を持ってもらえたようです。失敗というのは、恥ずかしい、あるいは制裁(責任を取らされる)というのがあるので、なかなか表には出てきにくいものです。もし自分から堂々と失敗を話しているのだとすれば、それは成功につながった失敗だった可能性が高いのではないかと思います。

例えば、現在、学校や職場でのいじめというのがありますが、深刻な場合は自殺などにつながったりして取り返しがつかない結果になったとき、その原因を探ろうとすると情報は隠れたがり、また歪曲したりする可能性が高いように思います。しかし、そうした情報をあえて表に出して、次の失敗につながらないようにしたいというのが、失敗学の本質ではないかと思います。人の死が関わってしまったような場合、膨大な予算を費やしたのに関わらず失敗した場合、福島第1原発の問題、水俣病の問題など、世の中にはその責任が厳しく問われる事例があります。それらの教訓は後世のためには真に財産となる知見になる可能性が高いわけですが、しかしそこで関係した人は口は開かくなくなり(あるいは重くなり)、闇の中に隠れたがる傾向にあるように思います。最悪の場合、口を開くことを恐れ、関係者が自死を選ぶことだって過去にはありました。

ところで令和6年はとんでもない幕開けとなりました。能登地震に羽田空港の衝突事故など、カメラが偏在している今日の情報社会では目を疑うような映像も多く残されるようになり、ショッキングな映像を目にすることになりました。

羽田空港の事故は、当初の報道から時間が経ち、詳しい状況が明らかになるにしたがって単純なミスではなかったことは明らかなようです。ブラックボックスも回収されたようですので、講義で紹介した事故調査委員会による調査結果で最終的に何が起きていたのかは明らかになるでしょうが、おそらくスイスチーズモデルのような状況が起きていたことは間違いないでしょう。

そして能登地震。多くの方がなくなっていますが、まだ状況が明らかではないため、これについては触れようがありませんが、同じく1月に起きた阪神淡路大震災についてはかなりのことがあきらかなっているようです。数千名の方が亡くなった震災でした。目の前で人が亡くなっていったわけで、凄惨な現場であったようです。ひょっとすると助けたかったけれどできずに自分が逃げたという状況があったかもしれません。そうした記憶は思い出したくもない方もおられることでしょう。しかし、震災後、このときことを教訓として後世に残そうと、調査団が組織されました。災害の時に人々がどのように行動したか、そのリアルを記録として残し、後世の教訓とするためです。災害エスノグラフィーと言います。この調査の際、対象者には「30年間は決して表に出さない」ということを約束して本当の話を聞きだしていったそうです。それぐらいしないと失敗情報は出てこないのです。

失敗情報というのは凄惨な現場で生まれるもので、極めて難しい問題を抱えたものです。そのことを私の口頭による説明で十分に伝えることは難しいとは思いつつ、しかし重要な問題でもあるので、あえて講義のテーマとして取り上げました。

今回は218名から課題提出がありました。自由研究の振り返りの方法については154名、失敗情報をまとめた事例について調査報告をしてくれたのが84名でした。

(以下、課題コメントについては省略) 

 

毎回講義が終わったあと、課題を読み終えた後にフィードバックの意味で受講生全体に向けて講義の補足と課題についてのコメントを公開しています。第1回から第14回までのコメントについて、文字だけですが、数えてみると5万文字ほどになっていました。
動画全盛時代の今時に、文字だらけのコメントなので、たぶんあまり読まれてはいないだろうとは思います。それでも何名かは読んでくれている感触を持っているのでそうした受講生向けにせっせとフィードバックしてきたましたが、それも残すところ後1回。
最後は名残惜しさのようなものが出てくるのかと思っていましたが、特にそういうことはなく終わりそうです。