2019年8月15日木曜日

データの長期保存の問題を実体験しました

台風10号は熊本地方にはさほど大きな影響は与えず去ってくれたようです。
良かった。

サマーエコデーが明けて久々に研究室に来ました。
今日の予定はM1(19)福嶋との院ゼミのみ。
研究内容についてマンツーマンで話をしていましたが、話をしていくうちに病院という組織は大学のような組織とは随分と違っていることを発見。
無意識のうちに大学という先入観でもって病院の話を聞いていたようで、私自身が随分と誤った理解をしていたようです。

さて、久々の研究室。少し休んでいると、どうも調子が悪くて・・・。
いつものペースで仕事ができず、それで思いついたのが体を動かすこと。
いつかやろうと思っていた昔のデータの整理作業をやることにしました。
25年前、高専から県立大学に赴任するときにいくつかのデータを3.5インチのフロッピーディスク(FD)に入れて持ってきていました。


県立大に着任して必要だったデータはすぐに利用したので、継続的にデータを別メディアに移し替えながら(=データのメンテナンス)使っており、その結果、もうFDとしては残っていません。
問題は、当時、必要でなかったデータ群です。
それらは今もFDの中に残っていて、静かに眠ったままもう25年が経ってしまいました。

25年も不要だったのだから、今さらそれを取り出す必要もないのでは?と思われた向きもあるでしょう。
確かに実用的には必要ないものですが、一応、自分の生きてきた証しのようなものなので、そこに何を残していたのか、自分自身が興味はあります。
タイムカプセルを残していれば誰でもそれを開けたいと思うものですが、それと似たような心理です。
 
ただ・・・
 
25年も経つとメディア環境は激変しています。
デジタル環境のタイムカプセルでは、それを開ける鍵が錆びつくのに十分な時間です。
フロッピーを読み込むにはそのためのドライブが必要ですが、今はもう持っている人はいないでしょう。

昔、保存していたデータの読み取りはいつの時代も困難を伴います。
古文書の解読作業の大変さを見ていればわかります。
ただ、紙の時代=アナログの時代であれば、例えば100年ぐらい経ってもおおよそ普通にページをめくることができるはずです。
それがデジタルになると、わずか25年でお手上げになります。
読もうにも、読み取る機械が消滅してしまっているのですから・・・
 
ただ私はUSB接続のFDドライブを大切に保存しておりました(念のために)。
動くかどうか心配でしたが、机の引き出しの奥底にしまっていたドライブを取り出し、PCに接続すると、カシャカシャと弱々しい音を立てながらもちゃんと動きました(感激)。

FDから順調にデータを読みとって(コピーして)くれています。
読み取り速度はおおよそ1.0kB/sでした。
FDに保存できるサイズは最大1MBなので(わずか1MB!!)、FDのデータ全部読み取るのに10分以上かかります。
1MBというと小さな写真1枚程度のものです。
それが10分ですから! 
25年前はほんとのんびりした時代でした。
今だと、例えばSSDを使ったドライブだと50MB/s程度の速度が出るのでFDの5万倍。
25年前と比べると今は1万倍を超える速度の世界で私たちは生きているわけです。
忙しくなるはずです(多忙になるばかりです!)。


さて、ようやくデジタル時代のタイムカプセルを開けましたが、次なる問題が立ちはだかりました。
FDドライブを準備していてデータは読み取れたのですが、せっかく読み取ったデータ自体を解読できないのです・・・。

取り出したデータの中に入っていたのは次の電子回路についての問題でした。
高専教員時代に授業で学生に解かさせていた演習問題です。
この演習問題を眺め25年前の懐かしい思いに浸れたのは、データをコピーできてから随分と時間が経ってからでした。


実はこの演習問題はジャストシステムという会社が開発した一太郎というワープロソフトで作成していました。
しかも一太郎の相当初期のバージョン(Ver3.0)でした。
当時、ワープロが大衆化を始めていた頃で、ワープロソフトは一太郎が国内標準でした。
なので、大学の授業でも一太郎を使っていました。

昔のソフトすぎて(一太郎のバージョンも古すぎて)、現在使っているソフトではまったく開けないのです。
タイムカプセルから出てきた文書を見てみたら象形文字だったようなものです。
 
ググると「諦めろ」とかいうのもあったりしましたが、一つの方法が見つかりました。
ジャストシステムが配布している「一太郎ビューアー(無料)」を使うと閲覧と印刷はできるのだということです。
編集する必要はないので、このビューアーという象形文字解読器を使ってファイルを閲覧し、それをpdfファイルとして印刷すればどうにかできそうです。
無事に、一太郎のごく初期バージョンのデータをpdfファイルに変換することに成功しました。
そうして閲覧できたのが、上の電子回路の演習問題だったわけです。
懐かしいデータをたくさん無事にサルベージできました。
おかげで、昔を随分と思い出すことができました(昔は、試験問題など見ると、かなり難しいことを学生に要求していたようです)。

 
紙の時代=アナログ時代も、時間がかなり経過したものは、解読にはそれ相応のスキルを学ぶことが要請されますが、デジタルの時代にも同じことが要求されます。
特にハードの部分は極めて重要で、メディアからのデータを読み取るハードが消滅してしまう危険性が高く、もしそうしたハードが手に入らなかっらもう個人ではどうしようもありません。
アナログ時代は、紙というメディアがあって、それが数千年も変わらずに使われていたので良かったのですが、デジタル時代になるとメディアが頻繁に交代していってます。
保存が長期になっていくとき、どういったメディアが妥当か、そしてデータの定期的メンテナンス(例えば一太郎からWordへの変更など保存形式の変更など)をどうするかなど、悩ましい問題に迫られます。
国とか、県とか、公的レベルの情報の長期保存については、仕事としてそうしたメンテナンスをやっていく人たちが担当するのでしょうけど、個人のレベルで、長期保存の問題に挑まないといけなくなったときはかなり厄介なことになりそうです。
  


0 件のコメント:

コメントを投稿