2019年3月17日日曜日

「高卒+社会人」と「大卒」の比較

財務省職員さんの論考を最近読みました。
その中に、大学はどれほど学生を成長させるものかという話題がありました。

その話題を紹介する前に、教育を経済学の観点で研究した人たちの結論を紹介しておきたいと思います。
教育という投資によって、どれほどの見返り(リターン)が得られるかという、なんとも実利的というかか、味気ないというか、とにかく現実的な研究の結果です。
関連する研究がたくさんあるのですが、その中に、大学への投資(授業料)が、自身の生涯賃金にどう影響するかという研究があります。
その結果は、高卒に比べ大卒は生涯賃金が高くなるというもので、投資以上のリターンがあることが示されております。
だから18歳人口の多くが大学を目指すことになるのでしょう。
この結果も一つの事実です。

こうした事実があることを承知した上で、財務省の方が書かれていたことを紹介します。
この方は高卒と大卒の部下に接した実体験を通して話をされていました。
なお、念のためですが、ここでいう「高卒」とは、大卒に比べ4年間という時間をすでに社会で鍛えられた人たちを言います。
4年間社会人経験をしてきた高卒の人で、財務省の中で東京に抜擢された人たちは、大学で4年間のんびりとしていた連中よりも優秀な人が極めて多いのだと言われるのです。
しかも、それは大卒が新人のとき、まだ社会人としての事情がよくわからない時期だけでなく、生涯続くのだと言われるのです。
うーーーん。

そういう現実を前に、大学に行った意味はなんなのだと言われるわけです。
もちろん大学で必死やってきた人たちは違うともおっしゃっています。
ただ、そうでない人たちは果たして大学にいく意味があったのかと・・・まあそういうことが書かれていました。(大学教育の実効性を批判をされているわけです)

大学がほとんど役にたっていないというと、それは、ほんと何も勉強せずにいた学生たちをイメージしてしまいます。
その連中と比べられると、まあ仕方ないなと思いますが、そうではないのです。
ここで注意すべきは職場が財務省だということです。
のんべんだらりと過ごした大卒と言いますが、その人たちは、財務省に入ってきた大卒のことを言ってるわけです。
財務省に入って大卒とは、最強官庁という言葉もある通り、偏差値のトップクラスの大学出身者がほとんどでしょう。
そして財務省に入るために、何もしなかったわけではなく、かなり公務員に向けて勉強していたのではないでしょうか。
そして、高卒の方というと、おそらく、高校からだとそうした偏差値の高い大学には届かなかった人ではないかと予想されます。

そうした関係にある人たちがですね、論考を書かれた方の主観ではありますが、社会での経験4年間で逆転してしまい、それが生涯続くのだとおっしゃるわけです。
もしそれが普遍的であるとすると、衝撃的です。

財務省に入るぐらいの大卒は、先に書いた通り、大学時代は公務員試験に向けて頑張り、のんびりとしていたわけではないはず。
本学でも公務員受験する学生たちは頑張っている人が多いことを考えると、おそらく、財務省に入った人たちは、それ以上に頑張ってはいたはずです。

しかし、それが高卒の方(の一部の人たちの方)が優秀になるという・・・。
大学っていったい何なのだと、確かに言いたくなりますねぇ。

うーーん・・・・

単に公務員試験を頑張って入っていくことは、入った後が実はあまり役に立っていないという・・・なお、それは選抜している公務試験のまずさも証明しているわけですけど。
それはおいておき、確かにこの主張はうなずけるところがあります。
少し前のガリラボ通信でも書きましたが、学生一般ですけど、徐々に深く考えるということが弱くなっている印象を受けています。
仕方ないとは思います。
そういうことをやる機会がなかったでしょうから。
そして、困ってしまうのが、それをやるように求めると根を上げてしまうということ。
(きつい表現をすると)逃げてしまう。
卒論に向き合うようになると、そのことがよくわかります。
人によって、こんなにと思うほど、大きな差が出ます。
そうしたネガティブな雰囲気を感じると、伸ばしてあげたくて負荷をかけるようなことはやめるものです。
負荷をかけられるとき、負荷をかける側も実は大変ですから。

それで、前にも書いたのですが、
 人は、成長しようとしている人に手を差し伸べる
と言います。たぶん、これは正しい。
手を差し伸べるのは思いのほかエネルギーが必要です。
大変なのですが、しかしその見返りとして、手をかけた人の成長の場に立ち会えます。
人が成長する場にいるのは楽しい。
小さい子どもを育てるのはほんとに大変ですが、多くの人がそれをやれるのは、見返り(子どもの成長)が大変さをはるかに上回るからでしょう。
優秀になった高卒の人たちというのは、人に伸ばしてもらう姿勢、そして受け入れてそれに応えて結果を出していかれたのでしょう。
そうした社会人として生きていった4年間が、一生の差になっているわけです。
驚きます。
若い時の過ごし方、大事ですね。
そして、大学のあり方、大事ですね。さらには、大学だけでなく、高校以前からの教育の在り方も大事です。
  


 

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