2019年6月15日土曜日

「公務員の未来予想図」について

少し前に読んだ本『10年で激変する!「公務員の未来」予想図』(学陽書房)の著者である生駒市長さんが、本の内容をかいつまんでダイヤモンドオンラインに寄稿されていました(こちら)。

ガリラボでは公務員希望者も多いので(今度の2年生はほぼ公務員志望!)、生駒市長さんの視点で描かれた「公務員の未来予想図」を紹介しておきます。
今後の日本社会の変化の根底には人口減少があると思います。また変化を促す重要な要素がとして技術革新もあります。
技術革新は、予測の延長上にないものがあります。インターネットは以前には誰も予測もしていないものでした。しかしこの技術革新の影響で社会は1995年を境に全く別物になってしまった感じがします。
(予測可能な)人口減少の流れ(等)と(予測の出来る)技術革新と(予測出来ない)技術革新とが合わさって社会は変化していきます。
予測の範囲内でという条件付きですが、公務員という職業の在り方は大きく変わるはずだと生駒市長は予測されます。
その変化をわかりやすく伝えるために「公務員の終身雇用の崩壊」というキャッチコピーで変化を表現されていますが、こうした事態が生じる理由として以下3点を挙げられています。
第⼀に、単純に多くの公務員を雇⽤し続けることができない財政状況になること。
第⼆に、AI(⼈⼯知能)やICT(情報通信技術)の普及、外部委託の増加により、職員がやるべき業務が⼤きく減少すること。
第三に、今後の急激な社会変化や市⺠ニーズの⾼度化・多様化等に対応するには、プロジェクトごとに外部から専⾨家を登⽤するほうが合理的になるから。

3番目について補足すると、これは、

新卒で採⽤したプロパー職員を40年近く全員雇⽤し続けるのではなく、課題に応じて職員を⼀定割合⼊れ替えていく「流動的」「弾⼒的」な組織運営が不可⽋

ということを意味だとのことです。
どの理由も納得できるものです。この3つだけなのか、はたまたそれ以外の原因も出てくるのか不明ですが、今後の変化の中で公務員としてのあるべき姿を次のように描かれています。
「終⾝雇⽤が崩壊しても役所が離さない公務員となること」「公務員をやめても⾷べていける公務員となること」です。こういう公務員に共通す能⼒は、⼤きく「始動⼒(リーダーシップ)」と「協創の⼒」の2つに収斂されます。

恐らく、公務員も民間企業の社員も同じ資質が要求されるようになるということでしょうか。たぶんそうですね。仕事の対象こそ異なりますが(職種が違うので当然ですけど)、やるべきことは同じようになるはずだと言われているようです。
要求されている2つの能力の「始動⼒(リーダーシップ)」については、
これからの公務員は、座して衰退を待つのではなく、変化を起こし、地域活性化への挑戦を続けていく「義務」があります。そのように挑戦できる職員だけが、終⾝雇⽤制度が崩壊した後も組織や地域から求められる⼈材となるのです。

と説明されています。民間で言われていることとほぼ同様ですね。また「協創の⼒」とは、

これからの⾏政職員、特に市町村職員は、「まちの営業マン」となり、市⺠を単なる「お客様」にするのではなく、場合によっては市⺠にも汗をかいてもらい、共にまちづくりを楽しめる職員となることが不可⽋となってきます。市⺠や事業者の⼒を借りるべき業務を⾒極め、その担い⼿を発掘し、対話やワークショップなどを活⽤して信頼関係を築き、取り組みを具体化していく⼒が「協創の⼒」です。

と表現されています。これは民間とは異なるようにも思いますが、ファンベース理論のように消費者の中のコアファンとの協働で自分たちのブランドを作り上げていっている現状を考えれば、民間とあまり変わりはありません。
昔は実験室に籠って実験をやったり研究室でずっとコンピュータに向き合っていた私ですが、地域に出る機会が増えるにつれて、公務員は営業マンだよな、そうあるべきだよなと実感しています。
ただ、そのことを学生たちはまるで理解できてないこともまた実感しています。
あまりにもコントロールの出来ている温室内にいて、野生の力を弱めているからでしょうか。


今後は民間から公務員へ、また逆に公務員から民間へと移動も増えていくのかもしれません。両者の違いがあまりありませんので。
転職というか、自らのキャリアを考えてステップアップあるいは充実感を求めて仕事を移動していくスタイルが定着していくでしょう。
今現在、もうそうなっているような印象も受けています。
今の世の中で、活躍している人たちの多くが、「移動の民」のような人たちのようにも思えるからです(力量を買われて移動していくタイプの人たち)。
だから・・・ということで、生駒市長さんは、役所はそうした移動の民を受け入れられるようにしておく必要があるともおっしゃってます。
職員に成⻑の機会を⼗分与えられない⾃治体は、キャリア形成の視点から⾒て魅⼒がなく、新しい時代において、働く場として選ばれなくなるでしょう。
役所も、職員に対しては社会変化の中で活躍できる公務員に成⻑できるよう、また、仮に公務員をやめても⾷べていくことができる⼈材に成⻑できるよう、挑戦の機会を与え、成⻑を促す義務と責任がこれまで以上に⼤きくなります。

役所という職場は、民間企業と同様のレベルで仕事についての魅力、またその仕事を通して職員の能力向上を提供できる職場にしていかないと優秀な人たちから魅力がなくなり、去る人材が増えていくと結果的にその地域は疲弊していくことになりそうです。

公務員を目指している私のゼミの学生たちには、(ここに書かれたことだけが全てではないですが、)ここに書かれたことは基本的な条件として、自分は「何を目指すのか」をいつも考えておくとよいのではないでしょうか。




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