2017年4月16日日曜日

ガリラボの文化「振り返りと議事録」を用いたトレーニングのこと

偶然、「金・地位・名誉でなぜ人は満たされない? 仕事を通じて幸せを得る方法」という
記事を見かけました(Facebook経由で知ったのかもしれません)⇒こちら

幸福学という分野の研究者へのインタビュー記事です。
記事によれば、幸せは、長期的なものと、短期的なものがあり、安定した幸せを
得ることができる「長期的幸せ」とは、
 人びととのつながりやコミュニティ、共同体を通して得られる幸せ
であり、
  利他的に求めるもの
ということだそうです。こうした長期的な幸せであれば、安定して幸せを感じて
いける、非常に幸せな人生を送れることにあります。これについて、この研究者は、
  自己保存ではなく、自分たちの集団の遺伝子を残したいという本能に基づいて
  いますので、安定的です。
  真の幸せはこちらであると言えるのではないでしょうか。
と論じられておられます。利己的でないところがポイントですね。
調査を通して、こうした長い幸せを感じる人の共通点として、次の4つの因子がある
ことを見出されています。
(1)「やってみよう!」(自己実現と成長)因子
   …自らの強みを活かし、社会的要請に応えて成長しながら自己実現を
    果たしている
(2)「ありがとう!」(つながりと感謝)因子
   …人とのつながりを尊重し、感謝や親切心、愛情を持って人の役に
    立ちたいと思っている
(3)「なんとかなる!」(前向きと楽観)因子
   …楽観的で失敗してもくよくよせず、自分を認めながら積極的に周囲と
    関わっている
(4)「あなたらしく!」独立とマイペース)因子
   …自分と周りを比較せず、自らの信念を貫いている

以前、幸福について、別の研究を紹介しました( ガリラボ通信2014/1/4 )。
この研究では、人が幸せを感じるとき、次の3つが共通した条件になっていることが
見出されていました。
 (a)人との交わり
 (b)親切心
 (c)いまここにいること
それぞれの詳しい意味については、先の通信を参考にしてもらえればと思いますが、
これら3つは、上記4つの因子と完全に一致しているとは言えませんが、かなり関
連しているように思えます。
※(a)(b)の条件はわかりやすいので実践しようと思う人もいるでしょうが、(c)を忘れて
いる人が多いように感じています。例えば、授業に出ているのに授業に参加していない学生などその例で、
いまここをなんとなく過ごし、「いまここにいること」を放棄してしまっている。そうした態度を続ける
ことは、幸せが逃げていってしまうことをこの調査は教えてくれます。
  
長期的幸せとは、与えられるものではなく、成長の過程で身に着けていくスキルに
よって決まっていくようです。
要するに、トレーニングしていくべきものなのですが、そうしたトレーニングによって
幸せを感じやすくなるよう自分を変えていくには、どうすればよいか。
先の研究者によれば、そのポイントは「メタ認知」だとのことです。メタ認知とは、
自分がやっていることを別の自分がモニターしている状態で、
  喜怒哀楽を感じている自分を、さらに上のレイヤーから俯瞰しているような
  イメージ
として捉えると良いかと思います。メタ認知を用いて、
  自分が物事に対してどう振る舞っているのかを冷静に見ることで、楽観的に
  考えたり、前向きにやってみようと考えたりできるように、心の癖を改善
していくのです。
先日、私の院生のゼミで「大人になっていくこと」という話題で、このことを話した
ばかりでした。
体は大人になっても、こうしたメタ認知を持てない大人=社会人は意外に多い。
自己を内省(振り返り)していく積極的なトレーニングをやってこなかったからで
しょう。
「子ども」から「真に大人」へと成長していくことが、実は、長期的幸せにつながっ
ていく。
大事なことを補足すれば、振り返りによって自分を捉えていく道具とは言葉です。
言葉が貧困であれば、メタ認知も貧困にならざるを得ません。
メタ認知のためには言葉の問題を避けて通れない。
大学でトレーニングしていくべき大事なこと、学生という「いまここにいること」を
きちんと実践していくことは、言葉の訓練していくことに他なりません。

行動がないときに振り返りをしようもなく、行動が不可欠ですが、それだけでは
子どもが遊んでいるのと変わりがない。そうした原始的なレベルの行動から脱し
ていくには言葉を学んでいかないといかない。
大学とは、そういったスキルを学んでいく場であるだろうと思います。

ガリラボでは課題(活動)と並行して、振り返りという手法を使って、そうしたトレー
ニングをやっていってます。
振り返りは、ガリラボの文化になっているかと思います。振り返りをして、それを
議事録という形で言葉にしていくことが当たり前になっています。
随分と時間をかけて議事録を書くことを続けています。
(議事録ではありませんが、M2(16)大野は私とのゼミの後、私との議論を振り返り、それを数千文字の
記録として残していくことを1年間続けていました。1回あたり90分程度のゼミで、その振り返りに
2、3時間(それ以上の時もあったようです)を要していたようです。
その記録の量は、1年後、かなり分厚い資料となっていました)
こうしたことは、メタ認知のトレーニングだと考え、ガリラボではずっと前から重視
してきました。
 
幸福学とつなげて考えれば、こうしたトレーニングは、社会人となって将来において
幸せに過ごしていくための、大事なスキルのひとつを養成していってくれるはずです。
  

 
 

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