2011年1月23日日曜日

実践の中で語ることと実践について語ること

今朝のNHKニュースで下の新聞記事にあることが取り上げられていました。
こんなニュースにはすぐに反応してしまいます。
 
聞いていると将棋のプロは直感的な判断の部分では「尾状核」というものが
活発に動くとのこと。
それに対してアマチュアは前頭葉を使っているようです。

アマチュアが前頭葉を使うのは、要するに、これがこうだからといった
言語を基本した推論を使っているからと説明されていたように思います。

一方、プロはそうではない。
 
訓練を積んでいった結果、言語が消えて、直感という形の別の脳機能を
使うとのことです。
 
興味深かったのでは、その脳機能の部分が習慣的な運動(すなわち無意識に
行える運動)をつかさどるところであったところです。
 
やっぱりですね!
前から、そう思っていたんですよ(ほんとですよ)。
 
深い思考ってやっぱり運動なんです。
運動なんだから、思考って訓練されなければならない。
習慣化されなければならない。
つけ焼刃(一夜漬け)で深い思考が身に着くことはあり得ない(これは少なくとも常識ですね)。
 
ピアニストが毎日の練習をさぼったら、最初はいいだろうけど、確実に腕が落ちる
ことは誰でも予想されます。
 
これと全く一緒で、深い思考を働かせるには、毎日、頭の訓練をしないといけない。

棋士はたぶん毎日将棋の方法について勉強しているだろうと思います。
毎日将棋という分野で使う「指」を訓練している。
  
ここで、継続して何かやることの脳機能的な根拠が見えてきますね。

最初はこうやって、次こうしてと言語を使っての訓練を継続させながら、
それを脳の奥深いところの言語を要しないところに落とし込んでいく。
そうやって強力な直感という思考が生まれていく。

それを可能にしているのが「継続的な訓練」ということです。
 
訓練をさぼると直感はすぐに低下していくはずです。
プロ棋士でも日ごろの勉強をさぼるとすぐに自分の地位を転がり落ちてしまうでしょう。
だから毎日かかさず訓練している。 

ここまでの一つの結論ですが、何事も継続的にやりましょう。

毎日少しでもいいから勉強をする!


それが高いレベル(プロ)になる秘訣(必要条件で、十分条件かどうかは不明です)のようですから。
 
そう思いながらガリラボ通信もほぼ毎日(これまでで650回を超えています)、継続させています。
私に対しては何が訓練されているかは不明ですけれど。
ただし、ガリラボ関係者のガリラボに関しての電子版キャリアフォリオとして使える道具にはなって
いるものと思います。
 
繰り返します。
継続です!
ごく普通の何気ない日常の積み重ね・・・それこそが大きなパワーを生む。

 
長くなりましたが、調子に乗ってきました。あと、もう2点ほど。
 
一つ目は、訓練して結果、活発化していくのは脳の深部、脳の古い部分。
脳の三層構造仮説でいったときの、爬虫類脳という脳の古い部分が直感に関与している点が興味深い。
長嶋茂雄氏に対して、よく「動物的直感」というコピーが使われていましたが、まったくその通りで
直感は動物的なのですね。
 
人は、言語という道具を使って、動物では持ちえない新しい直感を脳の部分に組み込むことができるわけです。
拡張による学習を果たしたわけです。
 
さらにもう一つ。
動物化した直感は、言語とは切り離され、どうしてそうやっているかは言語では説明できません。
これが
  実践の中で語ることと実践について語ること
の大きな違いです(ジーン・レイブらのテキストにでてくる有名な表現です)。

長嶋茂雄氏が自分のやり方を言語で説明することが困難であったように、一度、
継続的訓練を重ねてできるようになってしまうと言語は消える。
 
この意味で優れた実践家が優れた指導者になれるかどうかは不透明なのです。
そして、優れた実務家が優れた教育者になれるかどうかも不透明。

教育の現場は、熟練者になる以前の人たちが相手なので、言語が多用され、
実践について語ることが強く要求されるからです。

意外に多くの人がこのあたりの違いに気づいていないように思います。
 

ほんとに長くなりました。
実は現在、卒論・修論の添削をやっているのですが、とりあえず継続が大事ということ
なので、合間(?)を見て、合間であるにも関わらず、こんな長文のブログを書いております。
 
さらには、たまにはアカデミックな話題でも書かないといけなかろうとも思いまして、ですね。
 
卒論でみんなの「ゼミ活動を終えて」を読んでいると「ガリラボは活動的で・・・」という表現が
たくさんでてきたので、まあそればかりでもないだろうと・・・
ガリラボは実践だけをやっているわでもなく、その実践をこうして語ることもやるのだと
そういったこともゼミ生に伝えようと思い、長くなりました。

輝く知性は行動なしには生まれない。

少し修正します。
輝く知性は継続的な行動なしには生まれない。

さらに追加です。
次への知性は行動の省察(リフレクション)なしにも生まれない。
 
行動→省察→行動・・・このPDCAの連鎖が高度な知性、物事がよく見える世界(十全的参加)へとみなさんを連れていってくれるでしょう。
 
何度も書きますが、ほんと長くなりました。
何人ぐらいここまでたどり着いたでしょうか?
 



ここから新聞記事---------------------------------------------------

将棋 プロ棋士「最善の一手」 脳の2カ所が活性化…理研

毎日新聞 121()40分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110121-00000004-maip-soci

 

将棋のプロ棋士が「最善の一手」を直感的に見つける時に働く脳の部位を、

理化学研究所脳科学総合研究センターなどのチームが世界で初めて特定した。

アマチュアには見られない現象で、プロならではの直感をこの部位が生み出

しているらしい。21日付の米科学誌「サイエンス」に発表した。【西川拓】


 理研は日本将棋連盟の協力を得て、羽生善治名人らプロ棋士延べ約60人に

詰め将棋を解いてもらったり、将棋の盤面を見た時の脳の活動を、機能的磁気

共鳴画像化装置(fMRI)で調べた。

 

それを、平均年齢が同じアマチュアのグループと比べた。その結果、プロは盤

面の状況を素早く把握する際、後頭部に近い大脳皮質にある「楔前部(けつぜ

んぶ)」が活発に活動。

 

その後、短時間(約1秒)で次の一手を探す間には、大脳基底核の「尾状核

(びじょうかく)」が活発に働いていた。どちらもアマチュアではそれほど活

動しなかった。

 

 チェスの場合、アマチュアが多数の手をしらみつぶしに読んで決めるのに対

して、トッププロは最初に最善の手が直感的に浮かぶことが知られている。

今回、将棋でも同様のことが裏付けられた。

 

 尾状核は、ピアニストがピアノを弾く時の指運びなど習慣的な運動をつかさ

どる部位で、判断など思考に関係するとは考えられていなかった。

棋士が直感を身に着ける過程で、二つの部位の間の神経回路が発達すると考え

られる。


------------------------------------------------------------------------以上 
  
 

1 件のコメント:

  1. 読んでいなさそうで毎日読んでいる市川です。
    継続したら、勝手に癖になりますよね。

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