考えてしまいました」と紹介されたのがこの本。約1ヶ月前のことです。
1ヶ月が経ち、ようやく読み始めました。非常に面白い内容でした。
例えばその中のMRI(断層写真撮影用の医療機器)のデザインについての話を紹介
したいと思います(p.34)。
技術的に洗練されたMRIは、エンジニアから見れば、機能美に溢れた素晴らしい
ものにしか見えなかったわけですが(その心理、私にはよくわかります)、しかし、
子どもたちにとってはそうでなはなく恐怖のマシンでした。
恐怖で子どもたちが動くので、麻酔をかけないといけないような状況であったそうです。
MRIの設計を行なったエンジニアはその事実にショックを受け、エンドユーザーである
子どもたちの視点(他者の視点)に立つデザインをワークショップ等を通して再考しました。
子どもたちがMRIをどう体験し、利用するかを総合的に考えた結果、生まれたのがこのデザイン!
MRIに入っていくことを子どもたちの冒険物語に変えてしまったのです。
操作担当者は、子どもたちに
海賊船に乗って海を旅するから、船の中でじっとしてないとダメだぞ
と伝え、終了後は、部屋の中にある財宝を取り出すような仕掛けまで設けたそうです。
宇宙船バージョンもあるらしく、それでは、装置が「ブーン、バン」という機械騒音を
出し始めると、担当者は子どもに
これから宇宙船が超音速に入るぞ。よーく聞いてごらん。
と促すのそうです。
これによって、それまで恐怖の音だった「ブーン、バン」というのが、子どもたちにとっては
冒険へと誘うものとなっています。
こうした総合的デザインで、麻酔を要する子どもたちは劇的に減ったのだそうです。
機械設計というのが、単に機械の設計ではなく、人間も含めて設計しないといけない
ことを示しています。
平野さんが、白亜祭でのガリラボのことを考えたと言われていましたことが
よく分かります。
このMRIの事例にそのことが詰まっているように思いました。
なお、冒険を終えてMRIから出てきた子どもが、母親のスカートを引っ張りながら
ねえ、お母さん、明日もこれに乗れるの?
と言ったそうです。
企画・設計(デザイン)とはやはり人間を含んだ形で考えなければなければならないと
思います。
現在、ガリラボでは映像作りや卒論などがこの夏は展開しています。
先日、門前町のロケから帰ってくる途中、ゼミ生に、コミュニケーション力とかなんとか
いうけれど、そんなことより、スピードが重要だという話をしておりました。
同様のことがこの本にも書かれています。
ある優れたiPadアプリを開発した若者2人の話がそれです。彼はこう言ってます(p.165)。
創造性とは常に結果論だということを学びました。問題を解決するたったひとつの
名案をずばっと思いつくのが創造性ではありません。何百回と試行錯誤を繰り返した
末に最良の解決策にたどり着くのが創造性なんです。
繰り返しを可能にするのはスピードです。彼らのは話からすれば、ものごとを具体化して
いくスピードが創造性の必要条件と言えるかと思います。
アーティストの創造性についても紹介されています(p.176)。
陶芸の授業で、クラスを2つに分け、半数には作品の「質」に基づいて成績を評価すると
伝え、もう一方には「量」に基づいて評価すると伝えたそうです。
前者の学生たちはひとつの作品について全身全霊を注ぎひとつの作品に集中したそうです。
一方、後者の学生たちはたくさん作ればいいわけで、とにかくたくさん毎回ノンストップで
ろくろを回しながら制作を続けたそうです。
その結果、全ての授業が終わったとき、優秀な作品を作ったのは後者の「量」で評価され
る学生たちばかりだったそうです。
ろくろを毎回ずっと回し、陶芸のスキルを向上させていった学生たちが最終的に優れた作品を
作ることにつながるわけです。
これはこれまで学生をずっと見てきた私も、その通りだと思います。
時間をかけた学生たちが、最終的によく伸びている。
天才と呼ばれている人たちはこの「量」の学生たちと同じ行動パターンを取るようです(p.67)。
天才的な人たちも、失敗も多いのだそうです。
だけど、その失敗は、成功に向けた教訓を得るための学習資源であって、無益なものと
思わない傾向がある。そして、
天才とは、他の人より成功率が高いからではなく、単に挑戦する回数が多いだけ
なのだそうです。
エジソンが、白熱電球を発明できたのは、無数の失敗を繰り返し、学んだからでした。
そのエジソンは
真の成功基準とは、24時間に詰め込める実験の数だ。
と主張しているそうです。
熊本どうでしょうチームの映像作りは8月末締切です。
残り10日ほど。
時間が無くなったので、必死で制作、他人からの評価、そして作り直しのプロセスを
超高速でやってほしい。それこそ、ブーンと超音速で。^^;
ワークショップを開きます。ガリラボ白亜祭実行委員長・4年(11)藤本の主催です。
自分たちが出したいものを出す(エンジニアが自分たちの作りたいMRIを作るのではなく)、
ユーザーの視点、利用形態を想像し、総合的に考えたデザインを心がけたいですね。
そして、これも、企画(デザイン)が定まったら、白亜祭までにその企画(デザイン)を
具体化し、無数の実験を繰り返していくといいでしょう。
クリエイティブとは、制限時間内に何度実験できるかで定まります。
名案をずばっと思いつくのが創造性ではありません。何百回と試行錯誤を繰り返した
末に最良の解決策にたどり着くのが創造性なんです。
スピードが勝負です。
頑張りましょう。
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