2018年5月13日日曜日

何をやっているかはっきりとは言えないが、人間らしいことをやっているゼミ

少し前に、「AIvs.教科書が読めない子どもたち」を読了しました。
面白い内容でした。
AI技術のかなりの発展を遂げてきたわけですけれど、その成果のひとつとして、次の
リアルタイム物体検出技術が紹介されていました(次の動画)。
自動運転等で不可欠の技術ですね。
この動画に出てくる大学院生は世界中の企業からひっぱりだこに違いありません。優秀であることが
就職のポイント。当たり前の話ですけど。

さて、著者の新井さんは東大に入れるAIの開発を指揮したプロジェクトリーダーで
このプロジェクトをやった結果、東大に入るAIの開発は無理だと結論付けられています。
論理・確率・統計という現代数学が持つ方法の枠組みで作られるコンピュータプログラ
ムがAIの姿ですから、これだけでは多様な意味を理解するのは限界があり、素人が想像
しているようなAIの開発は無理だとのこと。
現代数学では、意味を理解する枠組みがないわけで、なのでAIで意味を理解することは
ありえず、意味を理解しているかのように見せかけているのだということでした。

技術的な話は非常に面白かった(私には)。ただ、この場で紹介したいのは、このプロ
ジェクトのAIは東大には入れなかったけれど、トップ20%程度の成績には辿り着けた
という事実です。
意味もよく理解できないAIが、80%の高校生に大学入試センター試験で勝てるという
わけです。驚きますね。
それが事実であると、そうなるとですね、、、
AIでも出来そうな仕事を残り8割の人は目指してはいけないということです。
例外はもちろんあるでしょうが、AIで今後代替されそうな仕事をやっていると、
たぶんそこはAIに置き換えらえるはず、と。
そろばんが得意だからとそろばんを使って仕事をして人たちがEXCELの普及で
そうした仕事はなくなったように、それと同じことが起きるでしょう。

AIによって今後代替されていく領域はホワイトカラーのところです。
まあ、そんなことが新井さんの本には書かれています。

話題がずれますが、この本では、最近話題のブロックチェーンの話題に少し触れて
あって、これも興味深かった。
みずほ銀行は昨年夏、実貿易取引の業務をすべてこのブロックチェーンでやった
そうで(内容はあまり私にはわかりませんでしたが)、その結果、従来であれば
何十人もの人間が1カ月以上かけてやっていた仕事がほぼ労働コストゼロででき
たのだとか(驚)。
こんな状況なので、メガバンクが人員削減を打ち出している理由もある程度理解
できました。
こうした動きは地方銀行にもやってくるんでしょうね、そのうちに。
そのあたりのことは私にはよく分かりませんが、ITの発展によって金融系の仕事は
随分と変わっていくことでしょう。
マネーというのは情報だし、ルールもきっちり決まっている領域がありそうなので、
AIに代替されやすい仕事内容が多い気がします。詳しくないので気がするだけですけど。
  
仕事の形態が変わっていくとき、大事なのが変化していく力です。
ところが、そうした力が非常に弱いということを中学生・高校生を対象に見出された
のもこの本の著者の新井さんでした。
AIの研究よりもむしろこっちの成果の方が影響は大きいのではないかとさえ思いました。
中・高校生が、基本的な文章がうまく理解できておらず、教科書が読めていないと
いうのです。
普通は、教科書が読めるのが前提です。
教科書とは、学ぶべき知らなかった知識がきちんと書いてあるわけで、人はそこから
新しい知識を獲得して学習を進めていきます。
教科書とはそういう性質のものです。
当たり前すぎて、何を言っているのと思いますが、それがそうではなくて、その教科
書が読めていないという可能性があるのだという、衝撃の事実!!
教科書が読めないということは予習・復習が出来ないわけで、独学などとてもできない
ことを意味します。
もしそうならば、新しいことを人はどうやって学んでいけばよいのでしょう。
事態はかなり深刻です。

・・・

改善策は・・・という問いに対し、「わかりません」というのが新井さんの答え。
色々と調べたけれど、そうした問題に対し、何が有意に影響しているのか、原因を
想定し色々と調査を進めたけれど、発見できなかったということでした。
問題は単純ではなさそうです。
ただ、多読よりも、精読、深読みにヒントがありはしないだろうかとは書かれて
いました。

昔は精読をしていました。本が高価で、持っている本が少ないせいもあって、それで
何度も同じ本を読むしかなったということも影響しているかもしれません。
幸か不幸か、世の中があまり豊かでなかったことが精読を促していた・・・?。
 
精読、私も非常に重要だと思います。
学生時代に読み込んでいた本(専門書です)、手垢で真っ黒で、何度も読んだので
最後は綴じてある部分が壊れて本が分解してしまった記憶があります。

学部生では疲れてしまい、ついてこない可能性が高いと思ってやりませんが、
ガリラボでは大学院のゼミでこうした精読をやってます。
本当は学部生でこそ、そんなことをやるべきなんでしょうが、でもそんなことを
やっていたら誰もゼミに入ってこないでしょうから。orz
 

時代は変化し、AIによって取って代わられる職業は徐々に増えていくでしょう。
だから今後は随分と変化が起きるのは間違いありません。
そうした状況で悲惨なのが、この本の最後の方の小見出しに
  AIにできない仕事ができる人間がいない
とあるような深刻な状況です。こうなるとお手上げです。
この影響で、仕事(企業)はかなりの淘汰が進むことでしょう。
これまで安定していた企業や職種にAIという道具が強烈な淘汰圧をもたらすことに
なります。
強烈な淘汰圧が生まれている中で新井さんが最も可能性を感じているのが
  80年代に一世を風靡したコピーライターである糸井重里さんが実践して
  いる「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」という「商い」の在り方
なのだそうです。
ここで突然、糸井事務所が出てきて驚きました。

この事務所の商品はすぐに売り切れてしまうぐらい少量生産だそうです。
需要がいつも供給を上回っている。そして類似品がないという点が特徴だそうです。
人気の理由は、
  「ほぼ日」の商品にはすべてストーリーがあります。魅力的な作り手の
  人柄、なぜその商品が「そこに在るのか」、そのストーリーに消費者は
  魅かれるのです。
ということだからだろうとのことでした。
物語を作る力が非常に重要です。さらん、こうした商品を販売している「ほぼ日」の
社員の皆さんというのは、
  「ほぼ日」でセーターやブラウス、「穴かがり」をストーリー付きの商品 
  として販売しておられる方々は、好きなモノづくりをして、大金は稼いで
  いないとしても、楽しく、人間らしく、誇りをもって生活できているはず
  です。
と新井さんはおっしゃいます。こうした企業がAIで代替されることはあり得ず、
将来的に残っていくはずだと主張されていました。
そうだよなーと私も思います。
この部分を読みながら、ガリラボの卒業生のOG(07,M11)冨田が山鹿でやっている
お店「ヤマノテ」がこうなんではないかと思いました。地域の職人さんと連携して、
山鹿に新しいスタイルを生み出そうと頑張っているようです。

新井さん、最後に「ほぼ日」についてこう書かれています。
  「ほぼ日」がメディアなのか、モノづくりなのか、営業なのか、何なのか、
  よくわかりません。たぶん、「総務」とか「会計」とか「商品開発」のよう
  に名刺を見たら何をしているかわかるような仕事は、何をしているかがわか
  る故に、AIに代替されやすく、先細って行くように思われます。けれども、
  「何の仕事とははっきりとは言えないけれども、人間らしい仕事」は、AIに
  代替されることなく、残っていくのです。
ここを読み、「あ~、ガリラボもだなー」と思いました。何をやっているんですかと
聞かれ、返事に困ることが多いんですよね。
昔、NHKのディレクターさんが研究室に取材に来られた時、色々と雑多なことに
手をだしているガリラボの実態をご覧になり、「ここは何の研究室ですか?」と
不思議な顔をされたことがあります。
それに対しどう答えるか困り、とりあえず「色々やってます」と返事にならない
返事をしておきました。
ゼミ生も、就活の時に困っているはず。それぞれに適当なことを言ってるのでは
ないでしょうか。笑

これまで「何をやっているかはっきりしないこと」を多少気にしていました。
しかし、それはもう気にしなくてよさそうです。
私は、新井さんの上記コメントに至って勇気づけられました。
これからは(も)AIとかと競争する必要もない関係ない位置に自分たちをおいて
おくために
  何をやっているかはっきりとは言えないが、人間らしいことを
  色々やっている
研究室を目指し、そういう風に説明したいと思います。
まあでもこんなこと、ゼミを選ぼうとしている2年生に伝えるのは難しいでしょう
けど(笑)。
分かりやすい説明のところが、分かるがゆえに魅力的でしょうから。
まあ、それでもいいんです。
全体に向けて伝わるようであってはあまり意味はない。
むしろそうした意味が伝わる、人間らしいことを望む人たちにだけに伝わればいい。
300人の2年生の中の10人程度にだけ伝われば十分です。
しかし、そうした人たちに対し、ガリラボの本質をどうやって届けるか、その方法が
難しい。
「何をやっているんですか?」の問いに「うまく言えないけれど、何の役に立つのかも
よくはわからないけれど、面白いことに色々と挑戦してます」との返事に興味を持ち、
共感してくれるような人間味溢れる10人ほどの人たちに声を届けることができると
良いのですけど。
  
 
 

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