2012年1月8日日曜日

逆転の発想は逆境の中から

ある研究計画書を前に、行き詰ったので、ネットを見てたら、ある記事が目に入り、
どうも書きたくなったので、ガリラボ通信を利用して書き留めておきます。

先日、3年(09)谷からの年賀状のことを紹介しましたが(風変わりな年賀状)、その
年賀状が投かんされたのは鳥取県境港市でした。
ご承知のように鳥取は、全国で最も人口の少ないところで、2012年1月現在、
59万人ということです。
熊本市よりも少ないのに、水木しげるロードを擁するこの県は、年間400万人の
観光客を集めているのだそうです。
アイデアは逆境の中でこそ生まれるようです。

さて、その鳥取県の中にある智頭町(ちづちょう)という過疎の町があります。
人口8000人に満たない小さな町です。
しかし、ここがまたすごいのです。

5,6年ほど前、コミュニティのことを勉強していた時、グループダイナミクスという
理論に出会い、その理論を紹介した書籍の中で具体事例としてここ智頭町の
ゼロ分のイチ運動」が紹介されていました。
ゼロ分のイチは、数学的には無限大を意味します。
無断大とは不思議な性質をもちまして、ゼロに無断大を掛けるとある値を持つ
場合があります。
そのことから類推なのだと思いますが、無から有を生み出す村おこし運動という
意味でこの名がつけられたのではないかと想像します。
さて、この運動を始める企画書がまた格調高いもので、ごく一部紹介すると、
   その町が、マチとしての機能を持ち、誇り高い自治を確立するならば、21世紀に
   おいて「智頭町」に確固たる位置づけを与えることができよう。智頭町「ゼロ分の
   イチ村おこし運動」の展開によって・・・・こころ豊かな誇り高い智頭町を創造でき
   ると考える。
というものです(杉万俊夫「コミュニティのグループ・ダイナミクス」,p.107,京都大学
学術出版会,2006年)。

ゼロ分のイチ運動によって、ぼんやりと記憶に残っていた町ですが、その後、NHKの
「にっぽんの現場」というTV番組
  変えろ!わが町~鳥取・智頭町 住民たちの町政改革~ 2009年1月31日
というのが放送され、再び智頭町の名前を目にしました。
これもたまたまこの番組を見ていたのですが、町の予算は住民自らが作っていこう
ではないかということで、町は「百人委員会」というものを組織して、ここで、住民が
政策を具体的に行政に提案していきます。
番組では、体育館で議論が行なわれていましたが、提案が認められれば、予算化
され、その政策が実施に移されるというものでした。
私が見ていた時には、保育所についての改善案を若いお母さんが町長さんの前で
そしてもちろん他の住民も見守る公開の場で提案している様子が流れていました。
直接問題にぶつかっている人の提案なので、非常に具体的で、見ていて、予算化さ
れれば提案したそのお母さん自らが具体的に動いていくのは明らかでした。

それから3年後、つい先日また智頭町の名前を今度はネットで目にしました(こちら)。
目にしたメディアは様々ですが(これも時代に流れの影響でしょうか)、こんな過疎の
町が、縁もゆかりもない私とこんなにも頻繁に遭遇するということは、この町がかなり
特殊である証拠でしょう、きっと。

さて、今回目にした話題は「疎開保険」というものでした。
東日本大震災の津波で、また原発によって故郷を後にせざるを得なかった人々は
それぞれが知り合いを求めて疎開していったことは記憶に新しいところです。
この事実を智頭町の人たちは黙ってみていなかった。
自然しかない過疎の町で、いや違います、自然しかないから、災害などの時にゆっ
くりとできる場所を智頭町だったら提供できると考えると人がいたようです。
そのことを起点にして、長期は無理にしても、田舎で暖かな人々のネットワークが生き
残っているこの場所で、3食付で1週間分の宿泊場所を提供してはどうだろうかと、
ひとつの政策を実践しているのです。
東日本大震災は1000年に一度ですが、しかし豪雨や台風などで災害救助法が適用
され、その地を離れざるを得ないことは毎年でもありそうです。
そういったことが想定される日本で、一人一口年間1万円の保険料で、誰でも智頭町に
疎開できるようにするのがこの疎開保険とのこと。
キャッチフレーズは
  みどりの風が吹く疎開の町
とのことです。

いかがでしょう?
逆転の発想の見事さに、完璧に脱帽させられました。
何という頭の良さでしょう。
逆転の発想から、具体的なアイデア、政策にまでいったいどういった人たちが
やっているのでしょう。
凄いの一語です。
全国、たくさんの自治体がありますが、こんなにアイデア豊富なところはそうそう
ないかと思います。
人口8000人の町、恐るべしです。

豊かな発想は、やはり逆境からなのでしょう、きっと。
同様なことを前のガリラボ通信でも書きました。参考までに。
 制約からすべてが生まれる。 (2009/10/7)
 不便のススメ  (2011/7/31)

仕事をしていく上では常に創造性が要求されるはずです。
そのために必要なのは、つまり逆境ですね。
ということは、今苦しいときというのは、ある意味で次の創造に向けた状況を
提供してもらっている可能性もあり得えますね。
だったら利用しない手はない。
高野進さんの言うポジティブ・ノンレジスタンスというのは、難しい状況を作り出し、
新しい創造に向かうひとつの方法なんだと思います。


書き始めたらやたらと長くなりました。
計画書に戻ります。(T_T)
 
 

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