2013年7月2日火曜日

普遍ではなく特殊~特定の個人を意識したプレゼンへ

ずいぶん前、2005年頃に放電コミュニケーションというコトバが世の中に登場しました。
普及することなく消滅していったかと思いますが、博報堂生活総合研究所が生活予報2006
の中で作ったコトバでした。
 
ブログやSNSが普及し、人々はネット上の不特定多数無限大(望月さんのウェブ進化論
登場したコトバです)の人たちに向けて情報を発信しはじめ、それによって自己を活性化
させているというものでした。
中空に放電するかの如く、見知らぬ他者に対して情報を発信していく、放電コミュニケー
ションとはそういうものを指し、その当時に、私もなるほどそうだと思っておりました。

しかし実際にはそんな人はほとんどいないですね。
 
ガリラボ通信だって、世の中に向けてなんて全く考えてなく、私のゼミ生に向けてのものです。
場合な時には、特定のひとりのゼミ生に向けて書くことだってあります。
ガリラボ通信は、私にとってはっきりと顔の見える相手が読者対象です。

だけど、そうやって特定の人に向けて書いた方が、実は普遍的であることも多いのでは
ないかと思うのです。
個に向けるから普遍的でありえる。
個に向けるから、人間味あるコトバだからこそ、多くの人にそれが届く。

小山薫堂さんは「おくりびと」の脚本を書いた時、世に認められようとか、100万人を感動
させようとかそんな大それたことなど全く思わなかったそうです。
脚本を依頼してくれた映画プロデューサー中沢敏明さんの恩に報いようと、中沢さん
ただ一人に向けて、「頼んでよかった」と中沢さんに言ってもらえるようにとそれだけ
考えて脚本を書いたのだそうです。
それが小山さんの脚本作りのモチベーションにもなっていたとのこと。
ずいぶん前にNHKの「仕事学のすすめ」に出演されたときにそう語られていました。

それと同じような例ですが、もう10年以上も前のこと、Celine Dionが葉加瀬太郎と
共演したコンサートがありました。
偶然、TVでそれを見たのですが、Celine Dionは会場に来ていたご主人に向けて歌っている
ように感じました(YouTubeの映像ではわからないでしょうが、TVで見ているとそういう
印象を受けました)。
根拠のない推測ですが、ひょっとするとご主人を感動させようと歌っていたのかもしれません。
 
 
 
個の中にこそ普遍は存在している。
普遍そのものが独立に存在しているわけではなさそうです。
不特定多数無限大といった概念も同様でしょう。
そういったものは、具体的な個(特殊性)の中にしか存在しえないのだと思います。
だから、個に向けていない言葉は、多くの人々にそれを届けるのは難しい。
 

これから卒論等で4年生はプレゼンをしていく機会が増えていきます。
その時のプレゼンの対象は、無限大ではなく不特定多数少数になりますが、この場合も
放電コミュニケーションで良いはずがありません。
中空に向けて放電するコミュニケーションで、人にコトバが届くはずがありませんから。

コミュニケーションデザインは、ガリラボの大事なテーマのひとつです。
どういったプレゼンをしていくか、それぞれにデザインの力を発揮してほしい。
ガリラボでのこれまでの活動の多くはそのためのものでしたから。
 
アカデミックな知的なプレゼンについては、先日の玉名市海開きポスターコンテスト
行った時の3年(11)藤本の発表が群を抜いているように感じました。
最近スーパープレゼンで見たTEDのMikko Hypponenのプレゼンを思い浮かべてしまいました。 

 
アカデミックなプレゼンの大事なポイントは、テーマの本質をつかみ、それをストーリーとして
提示するということ。
ただし、
  "Everything should be made as simple as possible, but not simpler."
    「何事もできるだけシンプルに、ただしシンプル過ぎないようにしておくべきだ。」(アインシュタイン)
は忘れないこと!
 
ガリラボゼミ生(そして私も)の多くの内容は100倍に薄めたカルピスのようなもの
(09緒方語録)なわけですから(笑)、そのうす~いカルピスと向き合い、本質を
つかみ、プレゼンの力によってそれを100倍に濃縮してしまいましょう。
そうすれば、カルピス原液を提示できますから。^^

来週(7/8)が学生GPの発表会。
4年生3チームが登場します。しっかりやってほしい。
 
ゼミ生もですが、私にもプレゼンはあります。
私にとっての難敵は90分の授業。
薄いカルピスをどうにか濃縮しないといけません。
そのためには、個に向けて話した方が良いわけですから、残り数回ですが、金曜の講義で
この理論を実践してみます。
受講している4年(10)漆島を教室の真ん中に強制的に座らせて、ですね。
漆島ひとりに向かって講義する実験に挑戦してみたいと思います。
どうなるでしょう!笑
 
 



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