2011年12月26日月曜日

地域のポートフォリオ化

数日前の朝刊にあった次の記事に釘付けになりました。
卒論発表会の朝だったので、この記事の部分だけ破いて後日紹介しようと
大学に持ってきていました。


この記事で紹介されている大杉さんが意図しておられたことは、ガリラボが
今年取り組んできたことそのものです。
電子書籍という新しいメディアをターゲットにはしていますが、「日常を記録
として残す」ということはまったく同じです。記事に、
   有名な祭りよりもむしろ、集落ごとの小さな祭事などが数多く記録され、
   貴重な資料となっている。
とありますけれども、実際そうなのです。
その瞬間、ありふれたごく普通のことは記録として残らない。
だからこそ、後日、非常に貴重になります。
このことについては、有識者のコメントとして、
   ・・・他人が見ても活用できるよう客観的にまとめられた貴重な資料。
   40、50年と時がたつにつれ、さらに価値が増すだろう
とその価値が述べてありますが、まったくもってその通りだと思います。
もちろん、この大杉さんほどのことはできないにしろ、ガリラボでは新しいメディアを
使っての記録の仕方(表現のやり方)とその発信のありかたを研究していきたいと
そう考えています。

大杉さんが残してきた地域の記録(=地域ポートフォリオ)をもとに、15回連載で
記事が掲載されるそうです。
楽しみにしておきたいと思います。

ところで、ポートフォリオとは、その時々の必要に応じて取り出し、再構成しながら
新しい表現物を生み出していきます。
記号論ではこのことを神話化といいますが、そのための素材としてポートフォリオは
重要なものです。
電子書籍という新しいメディアを利用して、地域ポートフォリオというものを作っていこ
うと考えたのはこれらのことをイメージしながらのことでした。

地域ポートフォリオというものを考案し、ガリラボの活動として実施していくプランを作ってから、
東日本大震災があり、そして村上龍の活動を追ったNHKの追跡AtoZ(2011/5/3放送)を偶然
見ることになり、これによって、アーカイブのためのメディアとしての電子書籍の可能性を知り、
それによって、以後のガリラボの特に09ゼミ生の活動は定まっていきました。
村上龍さんの活動は、次の記事「古き良き日本の伝統行事を電子書籍で再現」に詳しくあります。
これは地域ポートフォリオのことを説明するときに、この番組を09ゼミのときに視聴しましたが、
そればの要約版です(以下、ここの論点に関係するところを一部抜粋しておきます):

  村上さんが、選んだテーマは『日本の伝統行事』だ。「家族が集まる正月」「満開の桜の下で、
  同僚と酒を酌み交わす花見」「子どもや親が、短冊に願いを書く七夕」。伝統行事は、古くから、
  家族や地域の“つながり”を生み出してきた。村上さんは、震災で、多くの人がよりどころを失っ
  た今、伝統行事を通して、日本人が共有してきた価値観を見つめ直したいと考えていた。


  (村上龍著 『J.T.E ~日本の伝統的な行事』より)
  お盆が終わる夜、わたしの故郷である長崎では「精霊流し」が行なわれた。何百何千という「精霊
  流し」の小さな舟の明かりが川面に反射して揺れ、子ども心にも美しいと思った。わたしたちは、死
  者を送るかがり火をともに眺めることで、悲しみや慈しみの心を共有していたのである。
                        ・・・・
  「日本人に内在する文化や伝統など、拠って立つところを、もう一度、考え直そうという作品なので
  しょうか?」
   「ほとんどの日本の行事や伝統行事っていうのは、だいたい地方に根ざしているんですよ。例えば
  ですけど、お正月のお雑煮でも、地方や家よって違ったりしますよね。だからいま、そういうものを見
  直すことで、地域とか地方、あるいは家族がひとつになれるということです。昔はそれがあたりまえだ
  ったわけですから」

この文章にある部分を何度も繰り返し番組を見て、動画というものを、客観的に誰でも参照
できる形にアーカイブできる電子書籍の可能性を感じたのです。
もちろん、祭りではなく、今回は少なくとも普通には残っていかない三里木の日常の風景を
残していくことにシフトしていますが、ある意味では、より残りにくい、こっちの方がむしろ重要
かなとも思っています。
09ゼミ生による編集作業が大詰めになってきています。
ここで書いてきた意図をしっかりと汲み取ってもらい、よい形のアーカイブ(=地域ポート
フォリオ)が出来上がるのを楽しみにしています。

以上、かなり固いガリラボ通信になりましたけれど、2011年の活動の意味を
振り返り(リフレクションし)、活動の意義を再度考えるために(かなり意図的に)取り
上げました。
特に3年生は自分たちの活動を説明しないといけないことが多くなるはずです。
推敲していないのでわかりにくいとは思いますが、年の瀬にじっくりと読んでみてください。



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