大学が所在する熊本市東区が震度6強の地震(本震)に見舞われたのが、
先週16日(土)深夜1:25でした。
それから1週間が経ちました。
あの時からのことが、まるで夢のように思えるのは、私だけでしょうか。
14日(木)夜9:30の前震が起きてからの混乱に対応するため、夜通し大学で過ごし、
とりあえず収まったとの判断で翌日夜に帰宅しました。
寝入って3時間ほどした時、本震の激しい揺れに叩き起こされました。
家内曰く、前震ではそうでもなかったけれど、本震の時は「死」の恐怖が走ったと
言ってました。
ただ私の方は、この1週間、色々なことがありすぎたからでしょうが、本震の揺れは
もうはっきりと記憶には残っておりません。嫌なことはすぐに忘れる性格が功を奏して
いるようです。
震度6強の強烈な揺れが収まるとすぐに大学に向かいました。
学生や地域住民の皆さんが月出フィールドに集まり始めていました。
停電のため暗い中でのことでした。
教職員は誰がいたかあまり記憶にありませんが、ゼミ生では4年(13)中村、出口、
3年(14)山本、岩崎に会いました。
着の身着のままに避難してきた人たちに、前震の避難の際に入手しサブアリーナに
そのままになっていたゴザや毛布を月出フィールドの避難者の方たちに学生たちが
善意で配布を始めました。
また白亜祭実行委員会が保有していた段ボールを倉庫から取り出し、避難者に提供
していました。
避難してきた学生たちが自主的に始めた行動でした。
動きがバラバラだと効率が悪いので、学生たちから申し出てきたのか、こっちから
声をかけたのか、記憶にありませんが、代表格の学生たちが集まったところで、
自治会長の山本に避難者の支援関係のリーダー、岩崎を支援物資関係のリーダー、
そしてトイレの管理のリーダーとして中村を指名し、このリーダーを中心に学生グ
ループが生まれ、それぞれ緩やかな役割分担を設定し、学生たちは組織的に動いて
いきました。
それからの一瞬一瞬は凄まじいものでした。
色々な情報が洪水のように入ってきました。
何かが立ち上げっていくときでしたので、外から見ていると混乱ぶりは凄かった
のではないかと思います。
私の場合、学生や職員、教員からもたらされる膨大な課題に翻弄されつつ、矢継ぎ
早にやってくる問題を処理しておりました。
その際、目の前の課題を解決すのが先決で、それで全体としてどういったことが進行
しているのか把握する余裕は全くありませんでした。
レベルは全く違いますが、東日本大震災のときの福島第1原発で生じていた
混乱もきっとこんな感じだったのだろうなあと、1週間が経ち、少し落ち着いて
から振り返るとそう思えます。
この週、昼夜とほぼ大学の本部棟で過ごしてきて思うのは、緊急時に必要なのは、次々と
出てくる色々なタイプの課題に逃げずに向き合う態度、頭を急速にフル回転させて問題を
解決していく力、それを支える体力、そして大事なのが安全基地を持っていること、そういっ
たことではなかろうかと思いました。
それと人脈(=一緒に何かやってきた人たち)も非常に大事ですね。
緊急時には特にそう思いました。
私の場合、幸いなことに、大学内の教職員そして学生など多くの人を知っていたので、
情報が集まり、また急な相談をやりやすく、それで課題解決もやりやすかったように
思います。
ちなみに、外部からの急ぎの物資支援についてもそうした人脈によるものがありました。
日頃の<実践を通した>関係、大事です。
それと感じていることは、緊急時の職員さんの重要性。
前震のときは多くの職員さんが残業されていたのでその方たちを中心に事態の収拾に
向けた動きが急速に動いていきました。その時の準備が、本震が起きた深夜にも活きた
ように思います。前震がなくて、いきなり深夜の本震だけだったら、果たしてどうなっていた
でしょう。大人数に膨れ上がっていた避難の方々を抱え、かなり混乱していたはずです。
本震後も、自宅が被災し、避難生活であるにも関わらず、大学の混乱収拾に尽力されて
いるのをみていると公務員という人たちの底力、凄さを感じました。
また先生方も協力できることはないかと次々と来ていただき、混乱の対応にあたって
いただきました。炊き出し、駐車場整理、学生たちのフォロー、その他いろいろとあったと
思いますが、非常に有難かった。
あまりにも多くのことがあり過ぎて、この1週間の動きの記憶が曖昧になっていますし、
また私が見ていないところで色々な動きがあったと思いますので、緊急時に人々が
全体としてどういう対応していたのか、今ひとつ私の中では明瞭でありません。
関わった多くの人たちにインタビューをして、あの混乱の場を複数の視点から調査し、
その動きを明確化することは今後につなげる知見を抽出できそうで、興味深いテーマに
なるのではないかと思っています。
エスノグラフィ調査として難しい作業になりそうですが、誰かやってみたい人は
いませんか。
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話題は変わりますが、Facebook経由で、今回の熊本地震について、早稲田大学から
学生ボランティアに向けて出されたコメントの存在を知りました。
その中にボランティアの心得10か条というのがあります。
確かにそうだなと、感心しました。
早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)
学生災害支援ボランティアの心得10か条
http://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2012/06/26/1059/
第1条 ボランティア保険(災害プラン)に入る
第2条 不眠不休で頑張らない
第3条 被災地では信頼できる人と一緒に行動する
第4条 まずは相手の話を共感的に聞く
第5条 被災者が自分たちでやる仕事を取らない
第6条 涙が止まらなくなったら活動をやめる
第7条 できないことは「出来ません」とはっきり断る
第8条 相手の感情に巻き込まれ過度な哀れみや同情をしない
第9条 子どもと遊ぶときなどは過度に喜ばせようとしない
第10条 ボランティア活動の運営について批判はしない
この10か条の意味についての詳細は早稲田大学のサイトを参照ください(こちら)。
思慮のない、熱狂の中での善意は、真の手助けとはならない。
全くその通りかと思います。
緊急時にこそ、熱狂するのではなく、あえて冷静さに行動する。
(参考) 熱狂しつつも、冷静に〜アラブの春のその後からの教訓(ガリラボ通信2015/3/22)
「思慮深さ」を核として「異質な集団で交流する」「自律的に活動する」というのは、
21世紀を生きる世代に必要な能力としてキーコンピテンシーと言われるものですが、
ボランティアにおいても大事なようです。
今後の大学教育の中でも、こうした能力の育成は避けて通れないものです。
ちなみに、そうした能力がどの程度あるかを、本学ではPROGテストというもので、
学生たちには知らせています。
熊本地震後の行動を見ていると、多くの本学の学生たちがこうした能力を持ち合わせて
いたように思いますが、特に上で名前を挙げたゼミ生たちは思慮深く行動していたように
思います。今回の震災を契機にさらに磨きをかけていってほしい。
2016年4月23日土曜日
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